一月ぶりな上、激長文

今日は公立高校の合格発表でした。眠れませんでした。人はこれを「遠足前の小学生シンドローム」と呼びます。結局3時間ぐらいしか眠れませんでした。

今、これを書きながらaikoの「桜の時」を聞いています。明日は雪になりそうですが。

車で30分ほど走って、T高校に着いたのが午前9:10。なんでわざわざそんな遠いトコまで行ったかというと、そこを受験した生徒の中に、とりわけ思い入れの深い生徒がいたからです。

2003年、中2、4月入塾。1学期に英語・数学を担当、ともに偏差値30台。文法を知らず、単語を知らず、中1の復習。計算は何とか連立方程式までは出来るようになり、2学期からは学校に合わせることにした。

2学期。引き続き数学を担当。期末で初めてクラス平均点を超えた。

中3、1学期、英語を担当。4月の偏差値は54。それから2ヶ月後の6月。66にまで伸びる。将来の希望は大学進学(就職はしたくない。一人暮らしをしたい)。第一志望はM高校。合格基準偏差値は50。第二志望はT高校。合格基準偏差値は54。

こいつは、もっと伸びる。

そう直感、というか確信した俺は、T高校を第一志望に薦め、綿密な夏期講習の計画を立てた。しかし、彼女は夏期講習をほとんど申し込んでこなかった。7~8月の申し込み回数は、33回。中3の中では2番目に少なかった。「お前がやらない分、他のヤツは伸びるぞ。今やらないでいつやるんだよ」俺の言葉は届かなかった。

結果。8月の偏差値は数学40、英語58、5科平均46。見事に落ちた。相当ショックだったらしい。「冬期講習からじゃ間に合わない。2学期から理科を受けろ」今度は届いた。

2学期。数学と理科を担当。っていうか、かなりわがままを言って、俺の担当にしてもらった。数学では オリジナルの小テスト[PDF 40KB] を作成した。理科は一番苦手の化学分野からみっちりやった。「 勉強の仕方[PDF 138KB] 」と題したプリントを作った。期末テストに向けて 試験対策問題[PDF 122KB] を作った。

11月。数学48、理科46、5科平均51.6。ピーク時には全然及ばないが、9月、10月、11月と着実に伸びた。進路の話をした。第一志望をM高校からT高校に変えた。冬期講習の計画を立てた。期末テストで、初めて合計400点を超えた。

12月。冬期講習が始まった。12~2月の申し込み回数は、73回。今度はこちらが提示した最低回数を取ってくれた。「自分でも勉強してるんだけど、あんまり量をやらないから、もっと宿題を増やしてください」いつかの授業で、自らそう言ってきた。

12月アタマに受けたテストでは数学55、理科56。他教科も軒並み伸びて5科平均53.6。しかし、学校の三者面談ではM高校を薦められた(むしろT高はヤメロ)、とのこと。まるで自分が否定されたようだった。
「そりゃあねぇ、M高なら確実に入れるよ。でもお前就職したくないんだべ。だったら欲張れさ。お前はまだまだ伸びる。俺が保証する」
「え~、ホントですか?」
「お前な…あいつら(編注:学校の先生)と俺と、どっちがお前の学力を正確に知っとると思うねん」

半分ホンネで、半分ウソだった。確かに9月からこっち、偏差値は右上がりだった。しかしそれは単に「新しく学習した基礎事項」を理解できているだけであって、中学3年間の総合になる入試レベルの問題に太刀打ちできるほどの学力には至っていなかった。夏期前ならまだしも、総復習をするには、すでに遅すぎた。

年が明けて1月。引き続き数学、理科は俺が担当した。ベースのテキストはあったけど、特に弱い部分は自分で問題を作って[PDF 66KB]補強した。去年はそんなことしなかった。依怙贔屓…していたのかも知れない。せっかく伸びてきたから…ってのもあったかも知れない。俺の動機は何であれ、とにかく、俺がしてやれることは何でもしてやろうと思っていた。

ウチのシステムは一人の講師に3人の生徒が基本だが、この時期になると4人の生徒を見たりする。当然、授業の密度は薄くなる。だから4人になってしまうときは、割と空いてる早い時間帯に移動させた。どうやっても俺が担当出来ない日は、別の日に移動させた。

主任の執権乱用ってヤツ(笑)。

とにかく授業回数に余裕が無かったから、1回も無駄に出来なかった。ましてや、俺以外の誰かに任せることなんて、できやしなかった。その(他の講師の)授業で、自分に悔いが残るのがイヤだった(信頼していなかったわけじゃなく、単に俺のワガママで)。
その代わり、毎回の授業が真剣勝負だった。今は何がベストなんだろう、そればっかりを自問自答していた。

2月。1月に受けたテストの結果が返ってきた。予想通り偏差値は落ちた。国語54、数学49、英語53、社会57、理科50、5科平均52.6。ボーダーを割った。

「うわ、下がってる(汗)」
「下がっとるな~」
「どうしよ~。やばいですよね~」
「まぁ、数字だけ見ればなぁ。でもよく考えてみ。このテスト受けたの約1ヶ月前やで。お前、今の自分がこの時よりも低いと思うか?」
そう言った俺自身、危ないと思った。出来るなら、安全パイを選んでくれと思った。しかし…。

――もう少しだけ 信じる力ください――

静かに首を振った。だったら、俺の言うことは決まってる。
「だろ? 出願はまだ先なんだし。凹むぐらいなら、今はやれることをしっかりやれよ」
その日の授業では、敢えて宿題を出さなかった。
「来週までに何をどれだけやるかは、お前に任せる。今のお前なら、自分でどこをやればいいかわかるやろ。その代わり、解説を読んでも分からなかったところは来週きっちり質問せい」
とだけ言った。

2/8(火)。理科の授業があった。総合問題をやらせてみた。あれだけ苦手だった化学分野は完璧だった。
「なんか化学は得意なんですよ(笑)」
おいおい、反応比の問題もまともできなかったヤツが何を言ってやがる。っていうか、うれしいことを言ってくれるじゃねーか。

2/15(火)。出願日。理科の授業があった。どこに出願したか聞いた。T高校、という答えが返ってきた。

2/16(水)。志願倍率が発表された。募集人員162、志願者数213、倍率1.31。

ちなみに、今は志願変更ができる。今年で言えば17,18日の間に最初の志願を取り消して、他の高校に願書を出し直せるのだ。

開けて2/21(月)。志願者数確定。入試3日前、最後の数学の授業。
「志願変更した?」
首を振った。
「よし。じゃ、授業に入るぞ」
志願者確定数205、倍率1.27。162人が合格し、43人が落ちる。なんだ、受かる方が多いじゃねーか。過去問なんか、一切触れず、「今日は解けないが、明日は解ける」問題をかいつまんで解説した。正直、もっと時間が欲しいと思った。

2/22(火)。入試2日前、最後の理科の授業。磁界の問題でボロボロに間違えた。そうとう凹んでた。
「あー、やばいよー。これ、磁界の問題が出たら終わりますね」
「んなことねーよ。お前が基本を忘れてるだけ。考え方は全然シンプルだよ」
入試2日前。普通は「磁界」なんて細かい単元は捨てて、もっと即席で点に繋がり易い一問一答とかを中心に確認するのがセオリーだと思う。仮に「磁界」が試験に出たとしても、配点は10点分にも満たないと思う。だけど俺は磁界を徹底的にやることにした。二年も授業を担当してきたんだもの。こういう(俺らにしてみれば大したこと無い)「できない」 が、どれだけ彼女の不安感を煽るかは容易に想像できた。試験前の、最後の俺の授業。「分からない」ことなんて無い!「分からない」ことをあからさまに残したまま試験に送りたくない!右ネジの法則、右手の法則、フレミングの左手の法則、電磁誘導。全てをたたき込んだ。講師をやって4年、一番「なんとかしてやるっ!」と思った時間だったと思う。

俺の、最後の授業が終わった。

――どんな困難だって、“たいしたこと無い”って言えるように――

合格発表の掲示は9:00からなので、生徒に会えるかどうか不安でしたが…会えました。俺が見つけるより早く、
「あーーっ! 先生ーー、受かりましたーーー!」
って、叫ばれました。一瞬、アタマが真っ白になりました。だって、絶対落ちると思っていましたもの。だって、落ちる夢を見て目覚めましたもの。だから。

「おお、いやぁ、よかった、よかったなぁ」

としか言えなかった。(やう゛ぁい。aikoが効く…)
落ちたときに掛ける言葉を来る途中に(むしろ寝る前から)ずっと考えていて。もし泣かれたらどうしようとか。あえて気づかないふりをした方が良いのかしらとか。保護者からクレームが来たらどうしようとか(担任は最後までT高校志望にYesと言わなかったみたいだし)。今となっては無駄なことを必死に考えていたから…。

受かって本当によかった。言葉の限りを尽くして褒めてやりたかったけど、泣きそうになるのを堪えるので精一杯だった(笑)。その分、今これを書きながら少々どころかボロボロに泣いてるわけだが。

ちなみに、彼女は、今月も授業が入っている。大半の受験生は2月一杯(つまり入試まで)で授業が終わるが、希望者は高校準備として、高校範囲(俺らの時代は中学で学習していた内容)を学ぶ。その娘には、落ちるにしろ受かるにしろ、その先に大学進学という目標があるなら(たとえそれが「高卒で就職したくない」という動機であろうとも)、スタートで少しでも先に出ろと言った。その結果、とりあえず3月も授業を受けることにしたわけだが…。実はそこに俺は居ない。俺は今月で辞める予定
(ちなみに、生徒に言ってしまうと、辞める可能性がある=営業妨害になるかも知れないので基本的に口外してはならない、というのが俺の中の暗黙のルール)
なので、授業を担当していない、っていうか多分それ故に担当から外された。

それはそれで良いと思う。もう俺が為すべきコトは為した。いや、俺が為したわけではなく、彼女が成した。ただ、せめて俺が辞める前に一度だけ(無給でもいいから)授業を担当させてもらえるように頼んでみるつもりである。

無論、授業などするつもりはない。高校数学よりもよっぽど大切な、あるいは無益な「何か」を伝えたい。っていうか、今日何も言えなかったから、もう一度チャンスが欲しい。

よく頑張った。(ああ、ディスプレイが霞んできた)

お前が自分で考えてこそ、初めてお前の「個性」が出るんだ。

俺は、自分のわがままを通せて良かった。お前の授業を最後まで担当できて、本当に良かった。

たかがT高校に受かったぐらいで喜んでんじゃねーよ、バカ。お前はもっともっと上に行けるよ。

俺がやってきたことは間違いじゃ無い…よな?

俺はもう「先生」じゃ無くなる。だけど、お前(ら)は永遠に俺の生徒だ!

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講師のバイトを始めたきっかけは…(関係者のみぞ知る)きっかけであったがいざやってみたら、意外と自分に合ってるなとも思っているし、まだ必要とされているし…。だから、本心を言えば、まだ続けたい。しかし、親父もあと数年で定年退職、その頃には俺も三十路。いい加減に「アルバイト」では居られない状況になってきた。(せめてボーナスぐらいあればいいんだが)

4月からの状況は未定である。おそらく、しばらくはプーの状態で職探しをすることになると思うが。正直、どうなるかわからない。自分の技能を活かせる職を探すか、バイトの経験を生かして塾業界に飛び込むか、はたまた…。

辞めたくねぇ!辞めたくねぇ!辞めたくねぇ!俺は○○教室が大好きだ。教室っていうか、まぁ確かにあの空間も好きだけど、それ以上に俺たちを頼ってやってくる「あいつら」が大好きだ。絶対に何とかしてやる。俺がお前の人生を変えてやる。

でも、もうそんなこと出来ないんだ。これを書きながら「ああ、俺今月で辞めるんだ」って思ったら、ボロボロ涙がこぼれてきやがった!

――春が終わり夏が訪れ、桜の花びらが朽ち果てても――

とりあえず続報を待て!

コメント

  1. umai より:

    とりあえず来週話を聞こう

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