ウマー

学校が春休みに入ったせいもあり、今日は普段よりも多く授業に入りました。その分、色々なコトがありました。全部書きます。多分、すげー長くなります。

さっちんの授業がありました。「ねー先生、聞いて聞いてー」と始まりました。

「おう、なんや」
「あたしねー、カレシができたのー」
「あらそう、おめでとう」
「ね、見たい? 見たい?」
「つーか見せたいんやろ」
「うん(笑)。鞄の中からプリクラを出し
こっちがそう。なんか可愛くない?」
「確かに、なんかジャニーズ系やな」
「新高1なんだ」
「ってことは…いっこ上か。へぇ、年上のカレシねぇ」

とまぁ、色々とカレシ自慢をされました。やー、なんか初々しくてよろしいですな。

「○○(さっちんの友達)とかに言わないでよ。ヒミツにしてるんだから。このこと知ってるの、先生でまだ3人目なんだから」

カレシが昨日さっちんの家に遊びに来たって言うから、残り二人はきっとゆっことお母さんあたり…かな。

「じゃあ、さっちんがヒミツを教えてくれたから、お返しに俺のヒミツも教えてあげようかな」
「え、ホント? なになに?」
「あ~、でもどうしよう。聞いたら聞いたで、『聞かなきゃよかった』と思うかもよ」
「え、何ソレ。あたしのことじゃないでしょ、先生のことでしょ?」
「うん、俺のコト。どうする、聞く?」
「聞く聞く。聞きたい」
「じゃあ、コレもあいつら(さっちんの友達)にはヒミツね」

と前置きした上で…実際すげー迷って、
「実は幼稚園に通う娘がいるんだ」
とか悲しいことに多分本気で信じちゃうだろうウソで誤魔化そうかとも思ったけど、今まで言ってきた生徒のほとんどが「もっと早く言ってよ」という反応だったから、言ってしまうことにした。

「実は俺、月曜日でさっちんの授業最後」
「うそ…?」
「ホント」
「え? △△(俺がヘルプで行ってる教室)に行っちゃうの?」
「いや」
「え、何、辞めちゃうの?」
「そ」
「え~、うそ~。なんで?」
「いや、何でって言われても…一身上の都合で」
「うそ~。え、また戻ってくる?」
「え、それもない」
「うそ~」
「いや、ホントに。…やっぱ聞かなきゃよかった?」
「う~。なんで~、え~。お姉ちゃんは知ってる?」
「どうだろうね。ちぃが言ってれば知ってると思う」
「え~、うそ~、うそだぁ。なんで~」
「いや、だから何でって言われてもさぁ…」

この後しばらく「なんで?」ばっかり言われました。



今週の火曜日に、「ごめん、実は今日が最後の授業だった」と言ったら「ちょっとぉ~」と言いながら俺の肩口を何度もぶっ叩き、「マジで、本気で?」と散々繰り返したあげくに「え~、やだ~、辞めないでよ、やだやだ」と嬉しい駄々をこねやがったコが授業中に突然やってきたので、とりあえず写真を撮っておいた。


「はい、先生」と言って紙袋をくれました。
「んとね、お菓子作ったから持ってきた」だそうです。
「今までありがとうございました」と言ってくれた。
「いやいや、こちらこそ楽しかったですよ」と返した。
俺が授業中だったから気を遣ってくれたのか、あまり長話もせずさっさと帰ってしまった。


中身です。
今、飲りながら(笑)つまんでます。
美味いッス。
めちゃ美味いッス。
お金取れますよ、マジで。
あんた某私立高校で学年1番取るくらい勉強出来るのに、料理もめちゃめちゃ上手いッスね。
いや~世の中って不公平に出来てますねぇ。


手紙も入ってました。
字、ウマッ!
なんだこいつは、完璧超人か!?

つーか、すげー感動したんすけど…。

中2の頃からだから、約2年か。勉強に対する意識が高くて、納得できるまで何度も食ってかかってくるような頑固者で、「コレは応用問題だもん、難しいよ」って俺が言っても、解けないと不機嫌になるくらい負けず嫌いで。

いつだか、他の先生が授業を担当することになったときに、「え~、今日佐藤先生じゃないの~」などと文句をたれ、「ね~、これ動かせないの」と無茶な要求を言い(結局動かして)、「あたし佐藤先生の授業じゃないとヤだかんね」と言い放ってからは多分俺しか授業を担当してない。

人の言うことをすぐ真に受けるコだった。
「先生って音楽何聞くの?」
「最近はもっぱら演歌かな。やっぱサブちゃんっすよ」
「うっそ、超シブイんだけど」
「いや、ウソだから」
「(ふくれっ面で)信じらんない、また騙された~」
そんなパターンの会話が多かった。

このまま行けば、きっと希望する大学に推薦でいけるよ。頑張れ。



最後の時間は授業が無くて、イラン戦もあったから(笑)さっさと帰ろうと思ったんだけど、この二人にも言っておかなきゃと思って、授業が終わるまで待ってた。

左のコは中2の頃からの生徒。とにかく部活部活で、今の高校も部活で選んだ。兄、姉もウチの生徒だった。

右のコは今年度…5月か6月だったか…から通い始めた。ものすごく口が悪い。口を開けば「ウザイ」「キモイ」が出てくる。今日だって、授業に入っていないのに教室に残っていた俺を見て「まだ居るし」なんて言いやがったので「もうすぐ居なくなるよ」と言ってやった。

まー、言葉遣いがアレなだけで、実際は人懐っこくて素直なコだと思うけどね。

で、その口の悪い方(笑)が、帰りがけに、「ねー先生、聞いて、あたしまたカレシできたんだ」と。おいおい何だ今日は。佐藤先生にカレシできたこと報告祭りか?
「早っ。つーか、前のカレシができたの最近じゃねった?」
「そうでも無いよ。2ヶ月ぐらいは付き合ったんじゃん?」
最近の若者はなんだかなぁ。

「また先生の名札にプリ貼ってあげるよ」
「おう、貼ってくれ」
「今は無いよ。っていうかまだ撮ってないしねー」
「あー、残念。じゃあ俺は今度のカレシを見る機会がないや」
「はぁ?」
「いや、言葉の通りだよ。もう見る機会がない」
「え、何ソレ? え、うそー、もしかして佐藤先生もやめんのー?」
「うん。来週の月曜が最後」

うそー、まじでー、何それー、えー、みんないなくなっちゃうじゃん、またさびしくなるじゃん、などなど二人で言い合ってたっつーかむしろブーイングの嵐? で、最後だから写真撮らせろと言ったら、大人しく(むしろノリノリで)撮られてくれた。

二人高校は違うけど、バドミントン部で、二人とも結構強い。でもって成績もそれなりに優秀。左のコについてはテストの点数ぐらいしか聞き覚えがないけど、右のコは学年で10番ぐらいって話。

好きなことは一生懸命やれさ。そうやって何かに打ち込んだことは、きっとお前らの糧になる。


なんか実感が無いよね。俺自身に「いなくなる」って実感が無いんだから、辞めるって聞かされた生徒にも、実感が無いかも知れない。

ひょっとしたら、来週もまた、いつも通り授業をするんじゃないか、って。
ひょっとしたら、来週もまだ、佐藤先生はいるんじゃないか、って。


丸3年と3ヶ月。ひとつの仕事として考えれば、短いっちゃ短い。でも、濃かったなぁ。

特に主任講師になってからの、ここ2年。俺が頑張らなきゃと思い始めた、2003年5月から。ヘルプに行く日を別にしたら、俺があの空間に居ない日なんて、数えるほどしかないだろう。一度も授業を担当したことがない生徒なんて、数えるほどしかいないだろう。あー、効いてきた効いてきた。
いったい何十本、ホワイトボードマーカーを消費しただろうか。いったい何百本のタバコを吸いながら、生徒に挨拶をしただろうか。いったい何千回、“be動詞”と口にしただろうか。

いったい何百人の生徒たちと出会ったのだろうか。本当に。その中で、いったい何人の生徒たちが俺のことを今でも覚えているだろう。この先覚えていてくれるだろう。

教室に行けばいつも必ずソコに居て。いつの頃からか、いい年こいて茶髪にして。休み時間になると大あわてで外に出て一服して。あからさまに不自然な関西弁を使って。初対面でも、なれなれしく名前を呼び捨てたり、勝手なあだ名で呼んだり、わけもなくフルネームで呼んだりして。たまーに「昨日飲み過ぎてさぁ」なんて言ってぐったりしてて。掲示板に書き込むのはたいてい真夜中から朝方で。「はっはっはっ」と妙に演技めいてバカにしたような笑い方をして。何故か名札にリポDの『ファイト一発』のシールを貼っていた。

そんな変なオッサンのことなんか、忘れてくれて構わないさ。

ただ。

弟や妹と言うにはトシが離れすぎて、息子や娘と言うにはトシが近すぎたけれど。お前らは、俺が知るどんな言葉でも言い表せないような、そんな大切な存在で。ただただ真面目に、勉強を教えることしかできなかったけど。ことあるごとに、おバカ、おバカと言っていたけれど。本当にお前らのことが好きで好きでたまらなくて。たかが学校の勉強ぐらいで、お前らの将来が制限されてしまうのが悔しくて。なんとかしてやりたいと思って。でも、なかなか上手くはいかなくて。どうやったらいいんだろうって悩んで。悩んで、試して、それでもやっぱり上手くいかなくて、自分の無力さが悔しくて、泣いたときもあったさ。この先の人生、俺みたいに道を踏み外さないか心配で心配でたまらなくて。そんな俺だけど、道を誤ったおかげでお前らの笑顔にたくさん出会えて。先生、先生と呼んでくれるお前らの声がたくさん聞けて。本当に、毎日が大変で、割に合わなくて。だけど楽しくて、充実してて。今、こんなに悲しい気持ちになれることがとても嬉しくて。俺に残された授業時間は、あと180分しかないけど。俺が授業を担当できる生徒は、あと6人しかいないけど。本当に、もう残りわずかなんだけど。伝えたいことはまだたくさんあって。なのに、この一ヶ月はあっと言う間で。これが最後だよ、なんて本当は言いたくなくて。「やっぱり続けます」って言えたらどんなにいいだろうか、って思って。

さっきから、涙が、止まらない。

そんな変なオッサンがいたってことを、たまにでいいから、思い出して欲しい。

俺は、お前らのことを、ずっと忘れないから。

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