だれかのいとしいひと

短編集だから、明日の通勤で読み終わっちゃうかも。

午後、いつもより少し早い時間にハルの雑貨屋へ。セール最終日だけあって、いつもより混んでいるような。適当に店内をブラブラ。むぅ、なんの使い道も無いであろう蛙の置物がつぶらな瞳で俺に語りかけてくる…。

そんな風に物色してる最中「ぁ、ゃっぱり」と小さな声が横から聞こえた。そっちを向いたら、のぞき込むようにして俺を確認して手を振るミキがいた。
「おぉ、久しぶり」
「久しぶり」
「元気でやってる?」
「うん」
お母さんと買い物に来たらしい。あーしまった、お母さんにはあんときの御礼を言うべきだった。

休憩に入ったハルと、外で缶ジュースを飲みながら立ち話。
「あ、そうそう、ぉ父さん、ホラ」
「うん、気付いてた」
「なんだぁ~」
そりゃ気付くって。だってハルによく似合ってるもの。

いつも通りアロマキャンドルを買ってバイバイ。

多分、今日あたり塾はテストのはずだから、駐車場に見慣れた車があったら寄ってみようと思ったら、やっぱり停まってたから行ってみた。

入り口でいきなりアキちゃまに遭遇した(約1週間ぶり)。それから数分したら、今度はなみが来た(約2ヶ月ぶり)。それからさらに数分したらエリコまで来た(約3ヶ月ぶり)

なんや、今日に限ってこの偶然のオンパレードは。

なみに授業っぽいことを、ってか久々に板書しながら『あー、まだまだ俺もいけんね』とか思ってみたり、エリコと受験のコトを話しながら『あー、それなりに考え始めてはいるね』などと思ってみたり、アキちゃまにルービックキューブを指南(六面揃えらんないクセに)しながら、『あー、間違いなくコイツは小悪魔になるね』なんて思ってみたり、ユミコからの手紙を受け取って『あー、次のオススメ本を探さないとね』と思ってみたりした。

帰り、なみと一緒に教室を出た。ってか、ついてきた。

「先生、さっきさぁ、ちょっと聞いちゃったんだけど…ホント?」
あー聞いちゃいましたか。隠しとく予定だったんだけど。
「ホント」
「まじでぇ~。どんぐらいなの?」
「どんぐらいってのは…何?」
「いつまで?」
「ずっと」

「ずっとぉ!?」
「うん」
「ずっとっって…ずっと?」
「そだよ。あ、仕事辞めれば別だけど」

「まさかさぁ、実は会えるのは今日が最後でした、とか…ないよね?」
「ないない(笑)。多分また時々は遊びに来る」
「よかったぁ~」
「とりあえず今年も七夕の日は開けるらしいから、来てみるつもり」
「うそ。ふ~ん。じゃ、あたしも来よっかな」

なんたって、踊りの審査会場の真向かいになる特等席だから。

「ってかさぁ、先生来るときちゃんと連絡してよ」
「ん? あぁ、わかった」
「ホントだよ? マジで頼むよ? あたし先生に会いたいんだから」

「たまにはさぁ、あたし達のこと思い出してよね」
「あぁ」
「あ、でも思い出したら先生泣いちゃうか(笑)」
「そだね」
「ってか、たまに思い出して泣いてるんじゃないのぉ?」
「うん、たまにね」

望まなくとも、明日は来る。

一年、二年、三年…。

どうなってんのかなぁ。

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