今日から

怒濤のラッシュが20日間続きます。北は銚子、南は安房まで県内を縦横無尽に走り回ります。

講習会の帰りがけに教室に立ち寄った。昨日、月末に穴が空いてるとボスがぼやいていたので、代役としてのシフト調整と、娘に借りたDVDの返却。

暇つぶしに昨日買ったVBの本を読んでたら、なみがやってきた。

「先生、授業入ってる?」
「いや、入ってないよ」
「そうなんだ。ちょっと相談していい?」
「ええよ」

なんでも、部活の後輩が生徒会に立候補するらしく、それの推薦人になってくれと頼まれたらしい。

「あたし人前で演説するのとかって苦手なんだよね。運動会とか、あーゆー騒ぐ感じで前に出るのは平気なんだけど」
「やったらええやん、そういう機会はなかなか無いで」
「そうだけどさぁ。それでソノ子が落ちちゃったりしたら可哀相じゃない?」
「は、推薦人がお前かどうかで、受かるか落ちるかなんぞ変わらんわ」
「そーぉ?」
「推薦人がお前だから入れるやつはいるだろうけど、お前だから入れない、ってやつはそうそうおらんて。お前が中2のときを考えてみ。誰に投票するかを、推薦人で決めたか?」
「あー。そういえば…そうだね。全然気にしなかったね」
「せやろ。だいたいお前は何かと物事を大げさに考える傾向があんねん。お前一人の影響力なんざ大したことない。それでもやっぱり無理だと思うなら、無理って断りゃええ」
「でもさぁ、無理って言うのも可哀相じゃない?」
「そう思うんなら、引き受けてやればいい。落ちる落ちないはそいつ次第なんやから、お前はお前なりで応援してやりゃええやん。仮に落ちたとしてもな、そいつはお前のせいなんて思わん。もしなみがそういう状況になったとして、自分が落ちたのは推薦人が誰々だったから、なんて思うか? 絶対そんな風には思わんやろ?」

「そっかー…。っていうか、あとねー、中間が今週だったってことに昨日気が付いたの」
「お前な…。そりゃ範囲表すらきちんと見てなかったってことやないか」
「いや…そう。でねっ、来週は合唱コンクールがあってね、しかも漢検もある…」
「盛りだくさんやな」
「でね、前は結構勉強してたんだけど、その生徒会のやつとかもあって、なんか最近全然勉強する気が起きないの」
「まー、そういうときもあるわな。第一、お前はちょっと飛ばしすぎてんねん。長いマラソンなのに、100m走と同じようにダッシュすりゃ当然保たんわ」
「でも、ちょっとマズイよね」
「そういうとこが大げさやっちゅーの。お前、もうこれで帰るんやろ。俺もちょっと一服したいから、下行こうか」

教室を出て、外履きに履き替える。
「だから、あれやろ。テストの勉強もせなアカンし、漢検の勉強もせなアカンし、もちろん受験勉強もせなアカン。やらなきゃーって思う事がありすぎて、逆に何もできないんやろ」
「そうなんだよねぇ」
「そんなもんや。俺かて、あーあれもせなこれもせなって時ほど、何もできん。何からやろうか考えるだけで、結局何もせーへん」
「へぇ、先生でもそういうのあるんだ」
「あるある。しょっちゅうや」
「へー、何かちょっと安心した」

階段を下りる。
「俺ですらそうなんやから、なみがあれもこれもなんて出来るわけないやろ。出来なくて当たり前なんや。これはもう、しょうがない。ええんよ、やる気にならんかったら、何もやらんでも。でもきっと、そうは思えんやろ。そしたら、やっぱ一つずつやってくしかないわな」
「だよねぇ」
「とりあえず一番近いのは中間やから、それまではテスト勉強をしっかりする。それが終わってから、漢検の勉強。受験勉強はその後でええ。もう、目の前にあるモノから一つずつ片づけていき。それが一番手っ取り早い」
「うん、そうだね。そうしよ」

タバコを取り出して、火を着ける。
「ええか、なみ。できることは限られてんねん。アレもコレもなんて無理やし、そうしようと思う事自体がどっかおかしいねん。欲張りすぎたらアカンで」
「ん。わかった」

「先生に相談して良かったよ」

そう言われるのは嬉しいけれど、偉そーな事を言った分だけ、自分は少し凹む。言うは易く行うは難し、ってな。

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