お前は乾いている

履歴書を書いた。三枚もミスった。いっそワードで作ってしまおうとも思ったが、就職・転職サイトの『履歴書は手書きで』を見てしまうとそれもできない俺は小心者。

書類選考の上連絡、なので詳細報告はもう少し後で。つーか選考に残ってもことによっては蹴る所存なので。

マリナ。振替(時間変更)のため、俺が担当した。今月のテスト結果が返ってきたので、返却。予言は的中。まぁそんなもんだろうと思ったけど、国語だけは予想以上に良かった。

この、国語ができるってのは結構重要。ある程度国語ができていないと、当たり前な会話のキャッチボールができない。

は? と思うかも知れないが、塾、それも個別指導という場にいると、当たり前のコミュニケーションが成立しない場合があるのだ。指示語を使うと通じないとか、生徒の言っている意味が分からないとか、こちらの指示が理解できないとか。

本人曰く「国語だけは学校の授業にちゃんと出てたもん」

つまり、他の授業はちゃんと出てなかった、と。まぁ、それを突っ込んでも生産的ではないから、「おまえ国語がこれだけできてれば、他の科目もやりゃ伸びるで」って言った。実際、今日の授業でも、それを実感した。

ヤツは tired という単語を見てこう言った。「なにこれ? ティレド? どういう意味?」おいおい、と思うかも知れないが、実はコレ、すごいことなのである。英語ができない生徒の多くは、tired を読めない。正しく読めないのではなく、まったく読めないのである。タ行の音すら出てこない。少なくとも、マリナはアルファベットの羅列をすぐに音に変えることができる。正誤に限らず、自分の中である程度のルールが確立している。俺はこれ、自信があるんだけど、中1の段階では、皆 beautiful や Wednesday を「ベアウチフル」や「ウェドゥネズディ」でスペルを覚えなかったかい? 発音は「ビューティフル」「ウェンズディ」と分かっているのに。

本当は「タイアード」って読むけど、スペルは「ティレド」。それでいいのさ。実際、マリナはその後の和文⇒英文テストでは tired をちゃんと書くことができた。

「主語が“Tom”だったらbe動詞は?」 「is」
「正解。じゃ、主語が“I”だったら?」 「am」
「正解。じゃ、主語が“They”だったら?」 「are」
「正解。じゃ、主語が“Tom and I”だったら?」 「am」
「ぶー」 「えー、なんでー。あっ、二人いるのか」
「そや、“トムと私”やねん」 「are」
「正解!」

「There is a ball in the box. There are not any books on the desk.とりあえずbe動詞に線を引いてみ」
is, are に線を引く。
「OK。じゃ、次は主語に線を引いてみ」
There に線を引く。
「そやな。be動詞の前が主語やった。でもなぁ、マリナ、よく考えてみ。be動詞は主語で使い分けるんやったなぁ。でも、これは、同じ There なのに、is だったり are だったりやで。なんかおかしくないか?」
「ほんとだ…。ん~。あっ、ball と books!」
「そ、この There is[are] はそっちが主語なんや」

マリナは典型的な『出来ない生徒』の答え方をした。ただ、「あっ」と言えたのが、普通の『出来ない生徒』と違うところ。あくまで経験則だが、自ら気付くやつは伸びる。理解してないのと意識してないのとでは大きく違う。

今回のテスト結果で、安全校どころか適正校すらNULL出力だったマリナ。県内の最低ラインの高校ですらチャレンジ校と判定されたマリナ

ヤバクない?
これ、夏は毎日で決定だね。
あたしでも勉強できるようになるかなぁ。
ウチに居るとついついテレビ見ちゃうんだよ。
先生の名前なんてーの?
次の授業も先生?

お前はこっちを向いた。お前の方から手を差し出した。だったら、俺はお前の手をつかんで、力の限り引っ張ってやるよ。まずは座り込んだお前を立たせてやる、そして歩かせてやる。

歩こう。まず、歩こう。ゆっくりでいいから。うつむいたままでいいから。手は、握っててやる。

きっと、そのうち、歩いていることがもどかしく思えてくるから。そしたら、走ろう。一度走り出したら、道が見えてくる。カラダと道がペースを作ってくれる。伴走はいらなくなる。あとは、自分で、どこまでも走っていけるから。

不安になったら、タイムを聞けばいい。疲れたら、特製ドリンクを飲めばいい。辛くなったら、耳を澄ませばいい。きっと聞こえるだろう。隣のランナーの辛そうな吐息が。君を応援する、たくさんの声が。

オマエがどれだけの能力を秘めているかってことを、あと二週間で分からせてやるよ。まかせろ、オマエの運命を狂わしてやる。

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