秘密のランデブー

2人の間を隔てたのはあたしの心の黒いもの
絶対そうだと思いこんだ 寂しすぎるあたしの心

朝、はるから大作戦延期の報が入る。

仕事して。

帰りがけに駅構内の店に寄ってみたが、これだってモノが無かった。まぁ明日他で探してみるか。

南浦和で下車して、寮を見に行った。外見はフツーのマンション。でも部屋は狭い。とても机は置けそうにない。

契約すりゃ光ファイバー使えるらしい。申込書だけ貰ってきた。

武蔵野線に乗って帰る途中、やっぱ大作戦決行の報が入る。ぉぃ~、サプライズのためのアイテムが無いよ。買わずにスルーしちゃったじゃん。

家着いて、メシ食って、ちょっとだけ荷造りして、着替えて。「ちょっと出てくる」とだけ言って、記憶と勘を頼りに車を走らせてみる。

もろ道に迷って、というかはるの家が分からなくて遅くなったけど。いきなりだから迷惑じゃないかな、って不安はあったけど。秘密のランデブー大作戦は大成功。

一時間ほど早いけど、お誕生日おめでとう。

面白いくらいにビックリしてた。本人はすっかり忘れていた3ヶ月前の約束の品も喜んでくれた。はるが買ってきたゼリー、おいしかった。

ぉ父さん、気付いてる?」
「何?」
「あれ」
指さした先、壁にぶら下がってたモノ。
「あぁ…俺の名札やん(笑)」

自分のカケラがきちんと残ってること。事前に用意したわけじゃなくて、自然とそこにあること。

嬉しかったぁ。

「はぁ~、この状況がシンジランナイ」
「だろうね」
「だってさ、あたしここから塾に通ってたんだよ、ずっと」
「そらそうだ」
「でしょ? それなのに、今はぉ父さんがここにいるんだよ? なに? なんなの、これ~(笑)」

はる遅いなぁって思ってて、そんで外に出たら人影が二つあるんだもん」
「面白かったよ。“ちょ、ちょっと待ってて!”って家に戻ったと思ったら、またすぐ出てくるんだもん。待ってねぇし。つーか、何しに戻ったの?」
「うそ、あたしそんなことした? やばっ、全然覚えてない」

日付が変わって、改めて10代最後の誕生日にはると二人でおめでとうと言い。二人に見送られて、一人帰った。

家についてから電話をかけた。

「もしもーし。ぉとーどうしたぁ? 迷ったぁ?」

今無事に家に着いたよ。大丈夫、迷わなかった。

「そうなんだ。よかったね」

あのなぁ、正直この先二週間けっこー忙しくてさ。
二週間後になるか、一ヶ月後になるか分からんけど。
ちゃんとプレゼントは買うからさ。

「ほんとに!?」

長女にあげたのに、次女にあげないのは不公平やろ。
楽しみにしてて。
でも、あんま期待はしないでな。

「どっちだよ~(笑)」

ホントだな(笑)。
言った俺もよーわからん(笑)。
でも、ホント、ちゃんとプレゼントはあげるから。

「うん。じゃ、ぉとーしっかり寝てお仕事頑張ってね」

ああ、お前もレポートちゃんと終わらせろよ。
なんか分かんなかったら電話していいからさ。

「多分ホントに電話すると思うんでぇ…ヨロシクお願いします」

ん、わかったよ。

「うん。じゃー」

あー、待て待て。

「なに?」

んとな、ちぃ
お誕生日おめでとう。
生まれてきてくれて、ありがとうな。

「(笑)」

じゃ、バイバイ、おやすみ。

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