飲み過ぎた…つか、実家に戻ってからさらに飲んだ自分が悪いのだけど。
 眠いよ。だるいよ。
今日はM高校の文化祭。去年は仕事で行けなかった。
 一昨年は行こうとしたが体調不良で断念した。
今年こそは、と前々から思ってたけど。
 今年も支社内のレクレーションとブッキングして。
 支社内では、すっかり独立愚連隊っつーか、強引グ我道な状態の俺ですから。
 なかなか仕事で関われない分、こーいう機会で仲良くっつーか、
 ちょっとでもコミュニケーションを、と思う部分もあったんだけど、
 欠席した。
だって、あいつらに会えるのは、きっと今日が最後だから。

 高3、ユキオ。
 2年ぶりに会った彼は、ずいぶんと逞しくなってて、身長はすっかり追い越されてしまった。
 扇子で肩を叩いて「よっ」。
 2秒後に「あーっ、お久しぶりです!」って。
小学生のガキンチョだったのが、今や大学受験とはね。
探し出せたことよりも、俺のことを覚えててくれたことの方が嬉しかったよ。

 高3、チカ。
 相性問題を起こさないコだったから、
 俺が固定で担当するってことは無かったけれど。
 小6の頃から知ってるから、進路はけっこー気になってたりしたわけで。
あとは、やっぱり学校のイベントでチカに会っておきたかった。
 と言うのも、彼女には双子の姉が居て、姉の高校の文化祭には去年も一昨年も行ってて。
 勝手な後ろめたさと言うか、申し訳なさがあったわけで。
チカと同じクラスにミユキが居たんだけど、
 ちょっと会う勇気が無かった。中2~3の期間は俺がメインで担当してたけど、
 さすがに丸々3年経ってしまってるし。
でも、もし忘れてても、想い出させることはできただろうし。
 それが出来なくても、あれから3年後の姿を見られるチャンスだったわけで。
 唯一無二の機会を逃してしまったことに、ちょっと後悔。

 高2、なみ。
 俺が2足のわらじを履いた状態で、なんとか高校受験までを見届けた、最後の世代のコ。
「センセー、まだタバコ吸ってるの?」
 「酒とタバコとフリスクは止められないね」
 「酒とフリスクはいいけど、タバコはダメだよぉ。
 あたしセンセーの葬式に出るとかヤダよ?」
 待て待て、どんなに健康的でも、俺の方が先に逝くから(笑)。
そろそろ帰ろうかなと思いつつも、昇降口で長話。
「いちおー、成績はまだキープしてるから」
 「そかそか。そのまま行ければ、来年絶対ラクだから」
 間違いなく指定校推薦は取れるだろ。
「センセー、来年も来てくれる?」
 「あぁ、来るよ」
 「ホントに? 絶対だよ?」
約束が、また一つ増えた。


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